森田童子 『さよなら ぼくの ともだち』




森田童子<さよなら ぼくのともだち>・・・最終章(十五)2006年10月19日[20:40:22]

   “ さよなら ぼくのともだち ”

  長い髪をかきあげて
  ひげをはやしたやさしい君は
  ひとりぼっちでひとごみを
  歩いていたネ
  さよならぼくのともだち

  夏休みのキャンパス通り
  コーヒーショップのウィンドの向こう
  君はやさしいまなざしで
  ぼくを呼んでいたネ
  さよならぼくのともだち

  息がつまる夏の部屋で
  窓もドアも閉めきって
  君は汗をかいて
  ねむっていたネ
  さよならぼくのともだち

  行ったこともないメキシコの話を
  君はクスリが回ってくると
  いつもぼくにくり返し
  話してくれたネ
  さよならぼくのともだち

  仲間がパクられた日曜の朝
  雨の中をゆがんで走る
  やさしい君はそれから
  変わってしまったネ
  さよならぼくのともだち

  ひげをはやした無口な君が
  帰ってこなくなった部屋に
  君の歯ブラシとコートが
  残っているヨ
  さよならぼくのともだち

  弱虫でやさしい静かな君を
  ぼくはとっても好きだった
  君はぼくのいい友だちだった
  さよならぼくのともだち
  さよならぼくのともだち
  さよならぼくのともだち

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